食薬を育てよう
トントン トントン
カンカン カンカン
ヒューン
仙「皆、何をしておるのじゃ?」
里の人々「あぁ、仙人さんよぉ、隣の村で寒邪が猛威をふるっておるらしくてな、。」
里の人々「わしらの里へ入り込まれても困るから、壁を作っておるのよ。」
トントン カンカン
仙「ふむ、そうじゃのう、しかしな、寒邪を防ぐには壁よりももっともっと良いものがあるんじゃ。」
里の人々「壁よりも、強力な防護策が?」
仙「そうじゃ、寒邪も風邪も自然界におる邪気じゃ、壁が有ろうが無かろうが、何処でも自由に飛びまわることができる。そんな邪気に壁などは通用せんじゃろ?」
里の人々「なるほど、、確かにそうかぁ、、。」
里の人々「空まで壁を作る訳にはいかないからな、。」
仙「自然界の邪気に対抗出来るのは自然界の植物じゃ。」
里の人々「植物?」
仙「そう、植物じゃ。壁ではなくて、植物を植えるのじゃ、邪気が逃げていくような植物をのう。」
ざわざわ ざわざわ
里の人々「邪気が逃げていく植物なんて、育てるのが難しいんじゃないですか?」
仙「いやいや、これが簡単じゃ、邪気に対抗できる植物はそれはそれはもう丈夫な植物じゃ、ちょっとやそっとじゃ枯れたりもせん、物凄いパワーの持ち主なんじゃ。」
里の人々「そんな凄い植物が簡単に?」
タッタタッタタタタターー
ぺ「ハァハァハァ、、やっと、、着いた、、。」
仙「遅いのう、ぺんたん、持ってきたかのう?」
ぺ「ハァハァ、は、、はい、、これ。」
ガサガサ ごそごそ
仙「これが三葉(みつば)じゃ。皆もよく知っておろう、そろそろ新芽が出てきたようじゃ。三ツ葉は種を蒔いて簡単に育てる事が出来るのじゃ。」
仙「それからこっちが パセリじゃ、パセリの種を蒔いたものと、今食べておるパセリじゃ。パセリは一度植えれば2年は保つのじゃ。2年経つごろにこうして次の種を蒔いておくと良いのう、もちろん苗を買ってきても良いぞ。」
仙「そしてこれは ペパーミント じゃ。新しい葉がどんどん出てきて育っておる。これも苗を買ってくれば、ごくごく簡単じゃ。」
里の人々「確かに簡単そうなものばかりだけれど、、。」
仙「これ以外にも、バジルやシソなどがあるがのう、バジルやシソは1年草なのでな、又新しく種を蒔いたり、苗を植えたりして育てるので今はまだ見本が無いのじゃ。」
ざわざわ ざわわざわわ
里の人々「これを、植えるんですか?」
仙「そうじゃ、これらの植物は、いや食薬は庭がなくてもプランターや鉢植えで簡単に育てることができる。」
里の人々「こんな植物で本当に邪気を撃退出来るのですか?」
仙「これらの植物は『解表類』と言ってな、体表にまとわりついておる邪気を払いのける力を持っておるのじゃ。」
里の人々「体表の邪気を?」
仙「六淫邪気は自然界の邪気じゃ、必ず体表から入ろうとまとわりついてくる。その邪気を発汗によってはねのけるんじゃ。」
里の人々「発汗で、。」
仙「ふむ、これらの食薬には発汗作用があるのでな、汗と共に邪気を追い払うんじゃ。但し、発汗は軽め、少しで良いぞ。」
ざわざわ ざわざわ
里の人々「私、、家で育ててみます。うちは子供もいるので、邪気に入られては困るんです。」
仙「ふむ、それが良いぞ、。温室や無菌室で子を育てる訳にはいかん、。邪気に打ち勝つ抵抗力を持った子を育てねばのう。」
里の人々「私はバジルが育ててみたいわ、この前の海老フライが美味しくて、、、町のホームセンターに行って苗を買って来ます。」
仙「そうじゃのう、パセリなどもスーパーではわざわざは買わぬものじゃが、窓際に1鉢あれば気軽に使うことが出来る。三つ葉は切っても切っても次々と生えてきて手軽なものじゃ。ミントは枝を切って水にさしておくだけで根を出し、どんどん増やすことができる。日頃からこういった食薬を取り入れいておれば、邪気を恐れることなどないのじゃ。」
ざわざわ ざわざわ
仙「使い方はまた、弟子が教えに来るじゃろうが、この解表類には、『辛温』と『辛涼』があってな、体を温める『辛温』、体を冷やす『辛涼』じゃ。」
里の人々「ほぉ、辛温と辛涼があるのか。」
仙「季節や症状に寄って使い分けが必要じゃがな、簡単に言うなら春分迄が『辛温解表類』春分〜秋分迄が『辛涼解表類』を使うと良いのじゃ、あくまでもひとつの目安じゃがな。」
里の人々「なるほど、なるほど、、。」
仙「これからの花粉症には辛涼解表類が効くのでな、ミントは忘れずに植えておくと良いぞ。ミントやバジルなどは部屋のなかにも良い香りが漂って、気分もリラックス出来るからのう、。」
*辛温解表類(風邪、寒邪を撃退)
(冬・初春・晩秋・梅雨)
症状:寒気、熱、鼻水、鼻詰まり、頭痛、肩凝り、身体の冷え、食欲不振、下痢、むくみ、リウマチ
- 生姜
- ネギ
- 香菜
- パセリ
- 三つ葉
- 茗荷
- 紫蘇
- バジル
*辛涼解表類(風邪、暑邪、燥邪を撃退)
(夏・春・秋)
症状:発熱、鼻詰まり、目赤、喉の痛みと乾き、風疹、痒み、花粉症
- 薄荷(ミント)
- 菊花
- 桑の葉
- 葛根(くず)
仙人問答
ぺ「はぁぁ、疲れました。三つ葉、ペパーミント、パセリを持って走るの、大変だったんですよ。」
仙「おぉ、ご苦労じゃったのう。しかしこれで皆が食薬を育ててくれれば、邪気を恐れる事もなくなり、里も平和になるじゃろう。」
ぺ「はい、私達も今年も又バジルの種を撒かないと、、。この前作った海老フライ、好評だったようで嬉しいですね。」
仙「そうじゃのう、自家製のドライバジルはやはり香りが違うからのう。」
ぺ「バジルの種は、。」
仙「バジルの種まきは『桜の花の散る頃に』じゃ、もう少し待たねばのう。」
ぺ「はい、。あ、仙人、そう言えばこれ、、。」
バサバサ ドバドバドバー
仙「おぉそうじゃ、そうじゃ、壁を作ると言って折角育っておった菜の花を引き抜いてしまっておってのう、。全部持って帰ってきたのじゃ。」
ぺ「さすが仙人、。」
仙「こんなに沢山あってはぺんたんと2人では食べきれん、明日はそれで臨時薬膳講座じゃ。」
ぺ「はい。」