今週のお題「私のおじいちゃん、おばあちゃん」
里芋と昆布でとろとろ〜
グツグツ
グツグツ
ぺ「さ、出来た、、と、。」
ヒュヒューン
仙「ん、、くんくん、、何か良い匂いがしておるな。」
ぺ「あ、仙人、お帰りなさい。」
仙「良い匂いがしておるが、今日は何の薬膳じゃ?」
ぺ「はい、仙人、今日は咳や痰を改善する、薬膳スープです。」
仙「ほぉ、この前の化痰止咳平喘類の食薬を使ったのじゃな。」
ぺ「はい、里芋と昆布の豆乳スープ です、どうぞ。」
仙「おぉ、とろっとして美味そうじゃ。」
ズ ズズッ
仙「美味いのう、、そうか、もう里芋が採れたのじゃな、、。」
ぺ「はい、田んぼのババの所でもらってきたんです。」
仙「そうかそうか、里芋も昆布も痰や、痰によって出来てくる固まりを軟化して取ってくれるのじゃ。便通も良くなるし、むくみにも良い。もちろん痰湿体質の人にも良い薬膳じゃ。」
ぺ「はい、一緒に豆乳も使いましたよ。」
仙「それは良い組み合わせじゃ。豆乳は肺を潤すので、痰を排出しやすくしてくれるのじゃ。これからの季節にはありがたい食薬じゃ。喉の乾燥を防ぎ、咳や喘息にも良いしのう。」
ぺ「はい、、。」
仙「??」
里芋と昆布の豆乳スープ
材料(2人分)
里芋3個、玉ねぎ1/4個、昆布5g、水150cc、豆乳200cc、オリーブ油、塩、胡椒、パセリ
作り方
- 昆布を分量の水に浸けておく。
- 玉ねぎは薄切り、里芋は皮をむいて一口大に切る。パセリはみじん切りにする。
- 1の昆布を取り出し、5mmぐらいに切っておく。
- 鍋にオリーブ油を入れて火にかけ、温まったら玉ねぎを入れ、塩ひとつまみを入れて5分程しっかり炒める。
- 4に里芋を入れて炒め、昆布と出し汁を入れて里芋が柔らかくなるまで蓋をして煮る。
- 5に豆乳を入れ、塩、胡椒で味を整え、沸騰する前に火を止める。
- 器に盛り、パセリを添える。
里芋 化痰類
[性味/帰経 ] 平、甘、辛/大腸、胃
[働き]⑴化痰軟堅・消腫散結 瘰癧、血便、消渇、泄瀉
⑵益胃寛腸通便 消化不良、便秘
玉葱 理気類
[性味/帰経 ] 温、辛、甘/脾、胃、肺、心
[働き]⑴健脾理気 食欲不振、下痢
⑵和胃消食 げっぷ、吐き気、胃もたれ
⑶発表通陽 発熱、悪寒
昆布 化痰類
[性味/帰経 ] 寒、鹹/ 肝、胃、腎
[働き]⑴消痰軟堅 瘰癧(るいれき)、肝腫、脾腫、睾丸の腫大疼痛
⑵行水消腫 水腫、げっぷ、血便、脚気、浮腫
豆乳 化痰類
[性味/帰経 ] 平、甘/ 肺、大腸、膀胱
⑵利尿通便 便秘、小便不利、むくみ
⑶補虚養血 消痩、疲れ、産後虚弱、喀血
仙人問答
仙「なんじゃ、ぺんたん、今日は、珍しく、しおらしいのう、、。」
ぺ「・・実は、、今日の薬膳スープ、、思い出の薬膳スープ、、なんです。」
仙「思い出の?」
ぺ「はい、これは『じっちゃん2とばっちゃん2の物語』、、。」
〜 〜 〜
仙「ばっちゃん1は、確か5月に亡くなったんじゃったな、、。と言う事はばっちゃん2は、、」
ぺ「はい、お粥を一気飲みしたばっちゃんです。去年の敬老の日にもお話をしたと思いますが、。」
仙「ふむ、あの時は、ばっちゃんの記憶力が、、と、心配しておったな。」
ぺ「はい、じっちゃん2が髄膜腫で視力を失ってしまって、、それでばっちゃん2がその介護をしていたのです。その疲れやら、逃避やらで、、。痴呆が始まっていました。」
仙「じっちゃんとばっちゃんは2人だけで暮らしておるのか?」
ぺ「えーっと、いわゆる2世帯住宅、、で、、2階にはじっちゃん2の息子家族が住んでいます。」
仙「そうか、では、まずまず、安心じゃ。」
ぺ「んーーーー、そうですね、、。ばっちゃん2もじっちゃん2の目が見えなくなった時は、そう思っていたと思います。」
仙「違ったのか?」
ぺ「じっちゃん2の目が見えなくなっても、2世帯住宅は2世帯住宅のまま、、何も変わりはありませんでした。」
仙「そうなのか、。」
ぺ「変わったことと言えば、月に1度ばっちゃん2が食事の準備をして一緒に夕食を食べていたらしいのですが、それが、0回になった、という事、、らしいです。」
仙「ふむ、それは、、ばっちゃんもじっちゃんも寂しかろう、。」
ぺ「じっちゃん2の家は私の仕事場の近くで、、時間があると時々様子を見に行っていたんです。」
仙「そうか、、。」
ぺ「去年のもう少し秋も深まった頃でしょうか、、じっちゃん2の咳がひどくて、、。ばっちゃん2が『痰も酷いし、、困った、、デイサービスも休みっぱなし。』と言うので、、。」
仙「その時に作ったのが、このスープ、と言う訳じゃな。」
ぺ「はい、本当なら、杏仁(きょうにん)や枇杷酒も使って作りたかったのですが、この時はばっちゃん2の家にある材料で作らなければなりませんからね、。冷蔵庫や台所を探して、このスープを作ったんです。」
仙「じっちゃんも喜んだじゃろう。」
ぺ「はい、何と言っても、ばっちゃん2は料理が下手で、じっちゃん2の視力が失われるまでは、炊事は全部じっちゃん2がしていたんです。だから、じっちゃん2は、美味しいものに餓えていた、、ハハハ〜。」
仙「そうか、何でも美味しく感じる、のじゃな。」
ぺ「でも、その時、、なんです、。私がスープを作ろうと、冷蔵庫を開けたら、、」
仙「?」
ぺ「1リットルの牛乳が5本も入っているんです。」
仙「2人暮らしなのにか?」
ぺ「・・なんか、ショックで、、、ばっちゃん2の痴呆は、どんどん進んでるって、、。ばっちゃん2は、牛乳を買ってきた事を全く覚えてなくって、、。冷蔵庫の中はいつ買って来たかわからないようなお惣菜が、グチャグチャに詰め込まれていて、、。」
仙「そうか、、。」
ぺ「3、4日後に、今度は杏仁など中薬も使って、薬膳スープを作って持って行きました。」
仙「よしよし、。」
ぺ「そしたら、ばっちゃん2は、『この前のぺんたんちゃんが作ったスープ、毎日飲んでるわよ、痰に良く効いてね』って、、。」
仙「そんなに沢山、作ってきたのか?」
ぺ「いえ、2回分程度です。でも、ばっちゃん2は、そこに毎日牛乳を継ぎ足して、継ぎ足して、もう、お鍋はベタベタ、グラタンの様になっていて、、。」
仙「老舗の秘伝スープの様じゃ。」
ぺ「それで、私が新しく作って持って行ったスープを温めていると、、。『ぺんたんちゃんの近くに居るわね。』って私の本当にすぐ側まで椅子を持ってきて座り、『これ、今度おじいさんが入る事になる介護施設のパンフレットなの。』と言って、すっごく大きな声でそのパンフレットを読み始めたんです。」
仙「ふむ、ぺんたんが行ったのが嬉しかったのじゃな。」
ぺ「はい、ばっちゃん2は大はしゃぎで私の後をついて周り、まるで私の子供になってしまった様でした。」
仙「それで、、薬膳スープは役にたったのかのう。」
ぺ「はい、じっちゃん2の痰も咳も回復し、、ホッと安心した頃、、。」
仙「又、何か起こったのか?」
ぺ「ばっちゃん2が外出先で転んで骨折、入院、手術、、となりました。」
仙「何と言う事じゃ。」
ぺ「じっちゃん2はその日のうちに、介護施設に、、ばっちゃん2は手術、リハビリの後、別の介護施設へと入所しました。」
仙「・・・」
ぺ「それから、、ばっちゃん2が転んだあの日から、1度もじっちゃん2とばっちゃん2は会っていない、、もう2人は会う事もないかもしれない。一瞬にして、じっちゃん2もばっちゃん2もあの家から消えてしまった、、。」
仙「ふむ、。」
ぺ「じっちゃん2とばっちゃん2の生活は、毎日少しずつ、少しずつ、不安やストレスを溜め込み、溜め込み、溜め込み、、膨らんで、膨らんで、、、弾けてしまったんです。」
仙「・・・」
ぺ「ばっちゃん2の痴呆は一気に進みました。」
仙「そうなのか、、。」
ぺ「はい、、、、きっともうすぐ、、私を見て『あなた誰?』という日が来るんです。」