仙人、むかし話を語る。
ぺ「仙人、ジャスミンティーが入りましたよ、どうぞ。」
仙「うむ、よい香りじゃのう。ぺんたんよ、今はこうして体に良い食薬や中薬がわかっており、人々はそれを食して日々の健康に役立てることが出来る。しかし昔は大変だったのじゃ。」
ぺ「昔?」
仙「原始社会においては、人々は雑草を食べ、水を飲み、果実を取り、腐った貝を食べたりしてよく食中毒や病気にかかったのじゃ。まだその頃は、食べられるものと食べられないものの区別がつかなかったからのう。」
ぺ「では、食べるということは命がけでもあったわけですね。」
仙「そうじゃ、人類は長い長い歳月をかけて、食材を見つけ、その「食」から「薬」を見つけてきたのじゃ。」
ぺ「感謝、感謝。」
仙「ぺんたん、食薬の始まりは何か知っておるか?」
ぺ「始まり?」
仙「そうじゃ、一番初めに薬として使われた食材じゃ。」
ぺ「・・・」
仙「茶じゃ。」
ぺ「お茶?」
仙「そうじゃ、古代「神農」という帝がおった。この神農が民衆のために多くの草を試食し、1日72回の毒にあったのじゃ。ところがこれが茶によって解毒された。これが、最も原始的な食療の始まりなんじゃ。」
ぺ「な、な、72回!神農はすごい帝ですね。」
仙「長い時間の中で、実践と経験を繰り返し、穀類、肉類、魚、野菜など、口当たりがよく美味しいものは「食材」に、生姜、葱白、魚睲草(どくだみ)、番瀉葉(センナ)など味は良くないが薬効があるものは「中薬」に分類されていったのじゃ。」
ぺ「人類の歴史は食の歴史でもあるのですね。」
仙「そうじゃ、進化していく過程で火の使用が始まり、ここから一気に食が改善されていくのじゃ。」
ぺ「火の使用、それは知ってますよ仙人、だって私の大好きなお酒が誕生したんですから。」
仙「ふむ、確かに、炊いた穀類や米飯の残りが発酵して酒になっていったからのう。しかしそれだけではないぞ、火を通した食事になったことで消化吸収が促進され、胃腸の病気が減少し、栄養状態が改善され、脳も発達したのじゃ。」
ぺ「なるほど、食が発展したことにより、人類も発展、、。良い栄養状態は脳の発達につながるんですね。世の子育てママたちは頑張らないとー。ん?最近では子育てパパ、育メンかしら?」
仙「バランスじゃ、すべては陰陽調和。頑張りすぎてはならぬ、怠けすぎてはならぬ、偏ってはならぬ。
ぺ「はい、陰平陽秘(いんへいようひ)ですね。*1」
仙「薬膳という言葉が歴史に登場するのはそれよりもっとずーっと後のこと、今から2000年ほど前、漢の時代じゃ。「後漢書」の中に書かれておる。母親を亡くした四人の兄弟が新しい母親を迎えたが、新しい母親を嫌い悪戯ばかりしていたそうじゃ。あまりの悪さにもう別居しなさいと周りに言われてのう、しかし母親はこの子たちに深い愛情を注いだ。ある時、長男がひどい病気にかかり、母親が愛情を込めて薬膳を作ったところ病気が治り、兄弟たちも反省し母親に謝ったそうじゃ。」
ぺ「母親が愛情を注いで作る、それが薬膳の始まりなんですね。」
古代の人々の生活に思いをはせながら、ジャスミンティーをすする仙人とぺんたんでありました。
仙人問答
仙「ぺんたん、今日のような暑い日はやはり寒性や涼性の食薬が良いぞ。」
ぺ「そうですね、体の中の熱を取り除かないと。何が良いでしょうか?」
仙「うん、ん、む、麦などどうじゃ?」
ぺ「麦、いいですね、小麦、大麦、はと麦、、何を使いましょうか?」
仙「古代人の火の発見に感謝して、麦酒じゃ!」
ぺ「えー仙人!」
*1:陰陽のバランスが取れた状態